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コラム

一流と言われる会社にいる人が、一流なのではない。

帝国ホテルの元社長:犬丸徹三氏は、東京高等商業学校(現在の一橋大学)を卒業後、ホテルに就職。ボーイ、コックなどの仕事に就いた。
当時の価値観は今と異なっており、職種への偏見が根強くあり、母校の先輩からは「君の仕事は光輝ある母校の名を汚すもの」と蔑まれたこともあったという。
しかし犬丸氏は、そんな気持ちの無い言葉に揺らぐことなく、コックの腕を磨こうと英国に渡る。そして英国で与えられた仕事は窓拭き。
毎日同じことの繰り返しが続く。思わず初老の同僚に不満を漏らした。すると同僚は汚れたガラスと拭き終えたガラスを指さす。そして「きれいになれば限りない満足を覚える。生涯の仕事に選んだことを少しも悔いていない」と。
その仕事に対する誇り高さに犬丸氏は衝撃を受けたという。以後、どんな仕事も誠実に取り組み、その結果、一流と言われるホテルマンとなったのである。(『私の履歴書』第12集、日本経済新聞社)

どんな仕事でも心を込め、立派に仕上げれば、人間が磨かれ、信用、信頼、仲間もついてくる。
一流と言われる会社にいる人が、一流なのではない。『一流の人間』が働いている会社こそ、どこであれ、何であれ、一流なのであろう。

人材の仕事をしていると、「私は○○○という有名ブランドにいたの!」と、□□□会社に在籍していた=(イコール)自身の価値(値打ち)と思っている人とよく出会う。ブランドがあなたの数字:売上をつくってくれていたことに気付かず、努力、研鑚をしてこなかった方など。
終身雇用が崩壊し、外資系企業が台頭するなか、企業も働く人も責任というものを考えないといけない時代がやってきた。
犬丸氏のように、自身で道をつくっていく、仕事への責任、プライド、誇りというものを持たなければ、成長はないのだろう。

また会社から見た時、人を育てることが会社を育てることである。経営として、教育に費用を費やすというのは分かっていても後回しになっていることが多くの企業からも見受けられる。
だが、採用難、人材難と言われるなか、教育に時間、労力、費用を費やすことの大切さをあらためて考えるときなのだと思う日々である。

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